釧路空港を降りて、車で1時間ほどで阿寒湖に着く。天然記念物のマリモが生息する湖で、真冬には結氷した湖面に丸い穴を開け、ワカサギ釣りをする、あの湖である。「あかん遊久の里 鶴雅」は、その南岸、北海道最大のアイヌコタン(村)からすぐの場所にあり、和の趣のある佇まいで迎えてくれる。
 アイヌ芸術の木彫りの彫刻が展示されたロビーギャラリー、巨大なシマフクロウを祀った「ふくろう神社」など、館内の至る所で、この地で受け継がれてきたアイヌの文化を感じられる趣向。阿寒湖と雄阿寒岳を一望できる露天風呂や樹齢650年の巨木を使った丸太風呂、アイヌ文化をモチーフにした客室などには、大自然に抱かれているかのような道東ならではの旅情が漂う。
 多彩な湯処で楽しめる阿寒湖温泉で充実の一日を思い起こし、満足に浸った後は、お待ちかねの晩餐。バイキング、料亭、部屋食を選べるが、やはり北海道の旬の幸を欲するままに味わうという大いなる旅の目的もあってバイキングに。阿寒湖の周辺の山海の恵みを中心にした料理は、和・洋・中・韓の選りどりみどり。「次は季節を変えて訪れたい」、身も心も満たされてなお、「道東の醍醐味」は旅人を誘う。

▲写真上:阿寒湖畔在住の瀧口政満氏の木彫り作品を一堂に集めたギャラリー「ニタイ」。森の精霊が宿ったかのような荘厳な彫刻は一見の価値あり。独創的な世界を展開する藤戸竹喜氏の作品が並ぶロビーギャラリー「イランカラプテ」もある。/写真下:アイヌの人々が里の神「コタンコロカムイ」として大切にしてきたシマフクロウを祀る「ふくろう神社」。祠のような空間がホテルの中にあることにまずは驚かされる。