JAPAN PROJECT 日本に旅の力を。JAL 今月の特集「新潟県」新潟県越後湯沢温泉 雪国の宿 高半

康成も浸かった名湯を守り伝えて900余年

残暑が厳しい季節に降り立ったホームは、小説「雪國」の主人公が汽車で訪れた場所だろうか。「雪國」の舞台は明かされていないものの、物語に描かれた街並みなどから越後湯沢温泉というのが定説で、目指す老舗「高半」は、かの川端康成が逗留し、執筆を行った温泉宿でもある。
宿の目と鼻の先に1990年ガーラ湯沢の駅が造られているが、新幹線の駅からでも県道を歩いて20分ほど。周囲は康成も絶賛したという明媚な山々に囲まれいて、季節が良ければ散策も楽しい。「高半」は高みにあり、遠くに三国山脈までも見渡せる。館内には昭和9年から12年にかけて「雪國」の創作の場所となった「かすみの間」も一角に移設して保存されており、観光の人などに有料で公開されている。
900年もの間、枯れることなく自然湧出を続ける温泉は100%かけ流し。その美しさゆえ飲泉も可能で、古には「不老不死の湯」とも謳われていた。湯はぬるめで、ゆっくりと浸かるのにいい。秋が深まれば紅葉も見頃だ。日本を代表する文豪も、この自慢の湯で身体を癒し、ときに大作の草案を練り直したはずである。そして、地元・魚沼の豊かな旬の素材と吟味した調味料で作られた丹精の品々に、大いに舌鼓をうったに違いない。

川端康成が「高半」を訪れたのは数回に及び、貴重な直筆の書なども館内に展示されている。当時宿泊された部屋を保存した「かすみの間」の観覧は9:00~17:00(入館料500円※ただし宿泊者は無料)。自分の目で「雪國の世界」を感じてみたい。