今より遡ること300年、「深山荘 高見屋」は享保の時代から代々湯守として蔵王の湯を守り続けている。白壁の木造建築の館内には、長い歴史を伝える太い柱や梁、艶やかな床。純和風の伝統美が一同を非日常の世界へと導いてゆく。
 ロビーに展示されているのは、創業時から現在に至るまでの歴史を伝える品々。アンティークな家具が静かに配されたラウンジは懐かしい昭和の空気を湛える。何より圧巻は、やはり9つの浴槽からなる源泉かけ流しの湯船。創業以来絶えることなく滾々と湧き続ける自家源泉である。宿を代表する「長寿の湯」は、黒塗りの板塀を周囲に張り巡らせた趣が格別だ。湯に浸かり、視線を上に向けると、太い横梁が左右を貫き、いつか本で読んだ湯治場の風情を彷彿とさせる。1900年前の開湯とされる蔵王温泉は強酸性の硫黄泉で、身体をみずみずしくし、肌や血管を若返らせてくれるとのことで、少し欲張りに長めの湯浴みを堪能する。併設されてある桶風呂もいい。
 宴会場から聞こえてくるのは「やまがた舞子」の囃子か。静かで豊かな時間がやさしく心を包み込む。

▲純和風木造建築の館内を部屋へ向かう途中、宿の歴史を織り混ぜたスタッフの方の丁寧な案内が日本の伝統美の理解を深めてくれる。写真の晴風荘和室「夢路」は、歴史を感じながら過ごせる純和風のスタンダードタイプの客室。