甲子園の熱狂が真夏の暑さとともに過ぎ去ったものの、夏休みの人出でごった返した街は、ひと息つく間もなく行楽のシーズンを待ちわびた人々でにぎわいを増すばかり。夏バテを癒すどころか、日々の疲れが少しずつ心と身体に溜め込む悪循環に陥りそうなときは、やはり温泉旅に限る。
 旅の宿は、秋田・夏瀬温泉の一軒宿「都わすれ」。周囲に民家すらない人里離れた地にあり、静かに聞こえてくるのは渓流のせせらぎの音と鳥のさえずりのみ。客室数は僅か10室で、宿のなかに居ても静かでくつろげる。大浴場はもちろん部屋付の露天風呂も、江戸時代から地域の人々に愛されてきたという夏瀬温泉を源泉のままかけ流し。湯船に浸かると抱返り渓谷をひとり占めできる贅沢な造りが心憎い。この地の自慢であるターコイズブルーの静流と青々とした草木を眺めながら耳を澄ませ、五感で自然を感じてみる。湯は弱アルカリ性で慢性皮膚病などに効果があるといい、浸かった後の肌はしっとりとすべすべの「温泉冥利」。そして、地元の恵み、選りすぐりの旬の幸、郷土料理など、盛り沢山のごちそうをいただき、秋田の地酒をゆっくりと傾ける。
 疲れを癒すには、やはり夏瀬の旅がいい。  

▲写真上:県内産の黒毛和牛を溶岩石にのせて。きりたんぽをはじめとする秋田の名物や東北の自然に育まれた比内地鶏などの食材を使った料理とともに創作会席で味わえる。/写真下:自然に抱かれるように佇む一軒宿。クラブラウンジにはコーヒーやフルーツが常備され、自由に利用できる。また、ミニライブラリーコーナーでは書籍やDVDもご用意。