季節は行楽シーズン真っ盛り。休日に足をのばしても、あちらもこちらも人で溢れ、癒されるどころか疲れるばかり。どこかに「ひと息つきに」との想いを叶えてくれる場所はないものか・・・。そんな時は、ふらりと道後へと向かう。
 路面電車の終点が日本最古の温泉として知られる道後温泉駅。夏目漱石の「坊ちゃん」にも描かれた「道後温泉本館」から歩いて1分足らずの「大和屋本店」が目指すお宿だ。創業明治元年という老舗で、人力車が行き交う、大正浪漫の薫り漂う街に溶け込む10階建ての和の構え。聚楽壁をあしらった純和風の数寄屋造りの部屋が、長旅に疲れたゲストのために用意されている。大浴場の湯はもちろん道後温泉。男湯は落ち着いた隠れ家的要素を取入れた空間に、女湯は五感を通して癒されるような湯船に、とそれぞれの湯に趣向を凝らす贅沢なこだわりが道後屈指の老舗らしい。
 日が西に傾き、白鷺の振鷺閣(しんろかく)から「刻太鼓(ときだいこ)」が聞こえたら、そろそろ夕食の頃合い。浴衣のまま初夏の風を身体いっぱいに感じてみる。道後はいい。

▲写真上:江戸時代から「能」が盛んだった松山の伝統文化を継承すべく、 館内に能舞台を設置。ほぼ毎日17時30分から、「能舞台体験講座」が実施される。/写真下:能舞台に隣接するレストラン「松風」。篝火の焚かれた舞台を眺めることができる。