高松空港からバスで高松駅まで小1時間、そこから大歩危駅まで電車を乗り継ぐこと約1時間。大歩危駅からさらにホテルの送迎バスに揺られて30分。朝一番に出かけて、ようやく夕刻に宿に辿り着く、剣山国定公園祖谷渓は「日本三大秘境」と呼ぶにふさわしい四国の僻地にある。たっぷり半日かけての、そんな行程をものともせず、旅人をこの地に向かわせるのは、「非日常」を求める旅情と、「秘境を自分の足で歩きたい」という冒険心か。鮮やかな初夏の緑の景観を目に焼きつけながらの長い旅路が何とも楽しい。
 「ホテル祖谷温泉」があるのは、祖谷川沿いの「小便小僧」の像にほど近い場所。剣山国定公園の祖谷渓のほぼ真ん中に位置する、四国では珍しい源泉かけ流しの露天風呂を備えた温泉宿だ。醍醐味は渓谷の流れにせり出すように造られた男女別の野趣溢れる湯船と、湯船に向かうその趣向。約170m谷へと下った先にある露天風呂へ、専用のケーブルカーで傾斜角42度という急斜面をアトラクションさながらに5分かけてコトコトと進む。三大秘境の自然の美しさと静かな時の流れに、心はゆっくりと澄んでいく。辿り着いた湯の至福のひとときのなかに、ホテルの当主が標榜する「和敬清寂」の茶の湯のもてなしの境地がある。

▲写真上:谷底にある露天風呂まではケーブルカーで断崖を下る。紅葉の時季の眺めは、圧巻のひと言。/写真下:湯船に浸かれば目の前には潤いを帯びた静寂の森が。朝11:30~翌10:30まで利用できるので、どうぞ時間は気にせずに・・・。