旅人目線

とびらの向こうにある昭和な世界に驚嘆

言われるまで気づかなかったのですが、藤三旅館や湯治部とは棟続きになっています。そう、それぞれ趣の異なる3つの施設が棟続きであるがゆえの「一軒宿」なのです。夕食までの時間、施設のどこがどう違うのか興味がわいてきて、伝統のある老舗旅館を見学してみることにしました。

なんと。そこにあったのは、昭和そのものでした。純和風旅館を通り越して、昔のよき日本へ時空旅行をしているような。見るもの見るものが新鮮で、これが驚かないはずがありません。
旅人は時としてタイムトラベラーに。さっきまで優雅な気分で非日常空間にいたと思ったら、いきなり昭和の世界に引きずり込まれる激しいギャップ。カルチャーショック以上のショックを受けたことは言うまでもありません。

湯治客が使う専用の炊事場。最近では、宿泊しながらここで自炊する若いグループもいるそうです。いわば合宿かキャンプ。この階段も含めて小学校の一角を思わせる懐かしいシーンですが、若い人たちにとってはすべてが新しく映るのでしょう。

決して博物館ではありません。れっきとした「現役」の館内ショップなのです。

藤三旅館の純和風なインテリア。階段沿いに咲く花は、どことなく切なささえ感じます。

ロビーではなく「休憩所」。施設も什器も、時間が止まったままです。

新日本百名湯にも選ばれた藤三旅館。数年前、映画「海街diary」のロケ地にもなりました。

何十年も旅人を包み込んできたであろう、ひっそりと静まり返った廊下に、歴史の重みを感じます。

藤三旅館には、いくつかのこぢんまりしたお風呂があります。川沿いの雪見風呂というのも風情があります。

たまたま空いていたので、湯治部の客室を見せてもらいました。湯治という意味すら知らない人が多くなってきた今、「レトロな旅館」はかなり新鮮のようです。そのせいでしょうか、観光客だけでなくビジネスホテルとして利用する出張サラリーマンも多いそうです。「こんなところに行きたかった!」と、今痛感している読者諸氏も多いのではないでしょうか。

「みどころ」はまだまだたくさんありますが今日はこのへんで。あまり深入りすぎると、元の非日常空間に戻れなくなってしまいそうです。
まさか棟続きでこんな世界に突然トリップするとは思ってもみませんでした。このギャップは凄すぎでした。

食べやすく美味しい和食フレンチ

いよいよ夕食タイム。まずは食前酒に続いて先付・前菜から。焼き胡麻豆腐やたまり醤油餡など、なんとおしゃれなお品書きなのでしょう。

そして、鱈昆布〆、凍り大根といったお椀や、本日のお造り、岩手県産黒毛和牛ロースのソテーなど、これぞ和風フレンチという料理に目を奪われます。

特に印象的だったのは、三陸海岸から毎日直送されてくるという新鮮なハマチ、トロが絶品でした。とろけるような食感と脂身が只者ではありませんでした。

さらにもうひとつ。デミグラスソースとワインなどでブレンドされた自家製オリジナルソースを身にまとった岩手県産黒毛和牛ロースソテーの柔らかいこと。環境に配慮して育てられた最上級の「味の芸術品」と称される通りの絶品でした。

根っからの和食で腕を磨いてきたという総料理長。いきなり創作料理から入るのではなく、ちゃんとした下地があってこその和風フレンチ。好き嫌いが分かれるフレンチも、日本人の舌に染みついている味覚を決して無視することなくうまく融合することで、「食べやすく美味しいフレンチ」へたどり着きました。これこそ和風フレンチの妙味だと、舌鼓を打ちながら納得した次第です。

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